
●臓腑学説の概念、内容及び臓腑学説の特徴
1.概 念
臓腑学説は中医学で臓象学説ともいいます。
「臓象」の二文字は、『素問・六節臓象論』に最初に見ることができます。
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臓 と は:
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体内におさまっている内臓を指します。 |
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象 と は:
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現象を指します。 |
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臓 象 は:
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2つ文字を繋げてみると、体内に蔵している内臓は外に現れる生理機能と病理現象を指す事です。 |
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人体の生理・病理現象の観察を通じて、各臓腑の生理機能や病理変化、更にその相互関係を解き明かす理論のことです。 |
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例えば、内臓の肺は呼吸を司る。呼吸が肺の生理機能です。
もし肺に病理が出てくると咳や喘息が現れます。
すなわち咳と喘息は肺の病理現象です。
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2.内 容
内臓の分類と役割
内
臓
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分 類 と 役 割
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五 臓
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心・肝・脾・肺・腎
精気の産生、貯蔵をする
意識思惟活動を主宰する
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六 腑
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小腸・胆・胃・大腸・膀胱・三焦
ものを受納、伝導、消化する
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奇恒の腑
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脳・髄・骨・脈・胆・女子胞
精気を蔵する
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内臓の分類方法について、中医学では3種類に分けております。
これは主として形態と機能の違いによって区別されています。
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臓 :
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実質的な器官で、心・肝・脾・肺・腎5つを合わせて五臓といい、その生理機能は精気の化生・貯蔵をし、外部へ排泄しません。
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腑 :
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中空の器官で、小腸・胆・胃・大腸・膀胱・三焦が含まれ、六腑といいます。飲食物はまず胃から受け、小腸、大腸に運びます。その機能は受納、伝導、外へ排泄して、貯蔵をしません。
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奇恒の腑:
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五臓六腑の他にある臓腑で臓の特徴にも腑の特徴にも似ていないものを、奇恒の腑と名付けています。脳・髄・骨・脈・胆・女子胞があります。
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3.特 徴
臓腑学説を現代医学と対比させると、以下のいくつかの特徴が浮かび上がります。
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a 考え方:
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人体は1つ統一的な有機体であるため、内在的な活動は必ず、外的現象として現れるという考え方を基本としています。
例えば、心の生理機能は“血脈を司る”からみると心は血液を脈管内に循環させ、そのポンプの作用(心気)により血液をくまなく全身に送る働きをします。
しかし心は体の中に蔵しているため直接見えません。その働きはどれぐらいの状態かわかりませんが、判断材料として心気が旺盛であれば、血液の運行もよくなり、元気で顔色もピンク、つやつやします。
逆に顔の色が白っぽく、あるいは紫色が表れると心の働きが弱いと判断することができます。
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b 名前の概念:
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解剖学的な概念をもつだけではなく、生理機能全体と病理変化を指しています。例えば、中医学の「心」は現代医学でいう心臓と同じではなく、解剖学上の心臓のみならず、循環系統と神経系統の一部機能も含まれています。
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c 5つのシステム:
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五臓を中心として六腑を配した、五体及び五官などの各組織器官を連係させ、体全体の機能・感情・精神作用を語ることができ、5つのシステムを形成しています。
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体内の5つのシステム関係が強調されただけではなく、更に外界環境(社会環境と自然環境)と
の密接な関係も強調されます。
次回は心の生理機能をご紹介します。